2020.08.13INTERVIEW
美術作家 中村菜月さんにお話を伺いました
浜松市出身の美術作家、中村菜月さんにお話をお伺いしました。
―絵を描くだけではなく、文章や詩を書いたり、お菓子のパッケージを作ったり、多方面で活躍されていますね。
大学で日本画を専攻していたのですが、卒業後は制作ができればあとは何でもよかったので、当時は仕事をする
ことにこだわっていた訳ではないです。大学卒業直前、鴨江アートセンターのレジデンスアーティスト(※)の
募集があったため、選ばれるかどうかも分からない状態で浜松への引っ越しを決めました。結果的に、いろいろ
な方からご縁をいただいて、いろいろなお仕事をさせていただいています。
日本画家としては活動しておらず、絵を描いたり、文章を作ったり、絵に詩を入れてみたり。画材や技法も様々
で、岩絵具や水干絵具だけじゃなく、クレヨンも併用したり。
―作品を制作する理由を教えてください。
何日も絵を描かないと生きている感覚が薄れてきますが、それは寝たり食べたりすることと同じ括りの日常的な
行為で、これという理由はないような気がします。毎日絵を描いているわけではないんですが、身の回りにある
モノの質感だったり、色だったり、影のうつろいだったり、常に絵の事を考えています。
自分が描いた絵って、自分の中で世界はこうだよ(こう見えるよ)って説明している部分があるのですが、最近
になって、周りの人には同じように世界が見えているわけではないんだと気がつきました。見えていると思って
いたのでわざわざ描く必要もないと考えておりましたが、見えてないなら、自分が描いて、周りの人に見せるし
かないんだなと。
現実の世界と空想の世界があるけれど、空想の世界の方が広いと思うんです。空想の世界には、放置されている
ものが多い。それを表現する方法として絵を描いています。
―今後、挑戦してみたいことはありますか。
未知の領域ですが、音楽でも表現活動をしたいなと思っています。絵だけでは(自分の表現において)不完全に
感じることがあって、絵と音楽と言葉、表現活動の一つとして音楽を扱ってみたいです。
自分の絵と詩で絵本も作ってみたいなと思っています。
―ご自身の作品のPRをお願いします。
作品には様々な仕掛けを仕込んでいます。人によって作品との距離や受け取り方は異なるので、通り過ぎるだけ
の人、踏み込んで作品を観てくれる人、その距離ごとに仕掛けを施しています。また、作品から離れたあとの日
常の中で、ふとした瞬間に効いてくる、そんな作品だったらうれしいです。
中村さんとのお話しの中で、『想像することが何よりも大切ですよね』とお話しいただいたのが、とても印象的
でした。誰かのことを思いやったり、世の中のことを考えたり、そんな優しい想像力に溢れた作品が中村さんの
作品なのではないかと思いました。
中村菜月さんのホームページ
※鴨江アートセンター制作場所提供事業アーティスト イン レジデンス